FC2ブログ

スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←光明(中編) →今後の予定と拍手お礼
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png about
もくじ  3kaku_s_L.png AC
もくじ  3kaku_s_L.png 本編
もくじ  3kaku_s_L.png SSS
もくじ  3kaku_s_L.png 宝物
もくじ  3kaku_s_L.png 日記
もくじ  3kaku_s_L.png お返事
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 学園パラレル
もくじ  3kaku_s_L.png 本編前
もくじ  3kaku_s_L.png 本編中
もくじ  3kaku_s_L.png AC前
  • 【光明(中編)】へ
  • 【今後の予定と拍手お礼】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

AC

光明(後編)

 ←光明(中編) →今後の予定と拍手お礼
光明、完結となる後編です。





光明(後編)

WROの医療施設は本部近くの高台にあり、関係者だけでなく一般市民も受診が可能なので、シエラ号内で倒れたティファは他の負傷者と同じくその医療施設で治療を受ける事となった。
彼女らの搬送を終えたシドとバレットは病院の中庭に設えられたテーブルセットに腰掛け、売店で買ったパンとコーヒーで簡単に夕食を摂りながら、これからどうするか話し合っている。外灯の無機質な灯りに誘われた羽虫が立てるバチバチという音を聞き、今日の嫌な戦闘を思い出してお互いに苦虫を噛み潰した時、彼らのもとにティファに付き添っていると思っていたクラウドがやって来た。
「ティファはどうだった?大丈夫か!?」
勢い込んで聞くバレットに、クラウドは少し目を伏せた。悲しそうに。
「取り敢えず絶対安静だ。今入院手続きをしてきた」
「そんなに悪いのか?」
絶対安静という言葉にシドも反応する。
「…ティファの命は、別状ない。それは大丈夫だ」
それでも随分疲れている様子なのは、今頃ベッドで横になっているティファを案じての事だろう。クラウドより年長の二人は何故ここに来たのか聞く事もなく、彼の方から口を開くまでそっとしておく事にした。
何事も無かったかのようにバレット達は食事を再開し、クラウドは今一つ視線が定まらない様子で同じテーブルの空いている席に腰掛け男達の夕食を眺めていた。
やがて食事を終えた二人が席を立とうとした時、クラウドが、これも珍しい事であったが切羽詰まったように頼み事をしてきた。
「ちよっと、話を聞いてもらっていいか?」
了解の意思を、シドもバレットも再び席に着くことで表した。

「DGソルジャーの件があった後に、ティファにプロポーズしたんだ」
クラウドの独白にも聞こえる言葉に、シドもバレットも目を剥く。照れるでもなく、淡々とクラウドは続けた。
「泣いて断られた。もし普通の家庭や自分の子供が欲しいなら、遠慮せずに私を捨てて他の女性と結婚して欲しいと言われた」
マリンを通してティファと連絡をよく取り合うバレットもこの話は初耳で、今や兄や父親のような立場で彼女達を見守っている大男は信じられないとクラウドに念を押す。
「…本当にティファが言ったのか?」
目が合わさることなく答えが返ってきた。
「ああ」
「何でそんな事…」
どれほどティファがクラウドを想っているか、仲間として、また家族として知りすぎる程知っている。また、彼女が特別な幸運よりもささやかな幸せを願う女だと知っているからこそ、バレットにはティファの発言が理解できなかった。
「結婚して幸せになる資格は無いからだそうだ」
「資格?」
その答えは、バレットの心に突き刺さる。
「今償う為に生きてて、その中で与えられた幸せは受け入れる。前向きにも生きていく。でも、結婚とか自分からあからさまに幸せを手に入れようとするのは何か違う。受け入れられない。だから私との結婚は諦めて、だそうだ」
大男は何か言おうと口を開いては閉じてを繰り返し、結局何も言えず唸った。
二人の元アバランチメンバーのやり取りを見ていたシドは、彼らと知り合ったのが七番プレート落下があった後だったので、その悲惨さはテレビニュース越しにしか知らない。
その時現場に居て、七番プレート落としの原因となったテロ活動にも関わり、そもそもそのテロ活動の魔晄炉爆破事件にも犠牲者が出ていたのだから彼女らの持つ罪の意識はどれ程のものか。
ティファの気持ちが分からないでもないが、シドには一つ疑問があった。
「資格って言うなら…お前らだって同じだろう?」
その質問に、クラウドは自嘲気味に頰を歪めて答える。
「ティファの中では違うらしい。バレットは新しいエネルギー資源を見つけることで、この星の人々にとってなくてはならない存在になっているから幸せになる資格はあるそうだ」
「何だよそりゃ!」
リーダーとしてテロを首謀した人間は、吐き捨てた。
「俺は…」
またクラウドは、自嘲気味に言う。
「自分がアバランチに入れなければ、俺はテロリストにならなかったはずだって」
「テロリストにはならなかったが、黒マントになって今頃この星の人間共々死んでたな」
シドの言葉に残りの二人も頷いた。
ティファとクラウドがどのようにミッドガルで再会し、どうして行動を共にするようになったのかは本人達から聞いていたし、客観的に見て、記憶が混濁しマトモな状態ではなかったクラウドを見守るには、ティファの所属するグループに入れるしかなかったと他の仲間達も考えている。それがあったから、彼は黒マントになって北の大空洞に向かわずに済み、結果星を救う事も出来た。クラウド自身が誰よりもそれを分かっている。
「ティファにそれも言った。でも俺の方が罪は軽い、俺の方は普通に幸せになって良いんだなんて言われて…」
バレットは何も言わず考え込むように、外灯の明かりに照らされた中庭を睨んでいた。
シドはタバコの煙を吐きながら、彼に何と声を掛けたら良いのか考えた。
暫し沈黙が落ち、三人で病院を吹き抜ける風が患者の目を楽しませるために植えた木々の葉を揺らす音を聞く。さわさわと軽やかな葉擦れの響きとは対照的に、彼らの心は重い。
やがてクラウドは、自分に言い聞かせるように淡々と言葉を紡ぎ始めた。
「…俺にとっては結婚なんて形よりティファと一緒に居る事実の方が重要だから、ティファが結婚したくないと言うなら俺も結婚してティファと正式な夫婦になるのは諦めて、でもこれからもずっと一緒に居れば良いと思ったんだ」
「否定はしねえよ。男女の在り方なんて、人それぞれだ」
シドの発言にバレットは何か言いたそうだったが、それでも今は黙っていた。
「ありがとう」
こんな事で素直に礼を言う男だと思っていなかったので、やや驚きながらクラウドに向き直ったシドの目に映ったのは、膝の上で組み合わせた両手に視線を落としたままの悲しげな横顔だった。
「…子供は、正直俺達には出来ないと思っていた。四年以上一緒に居て、その…」
クラウドが少し言い淀む。
「特に明らかな避妊をしていなかったのに、出来なくて」
彼の告白に、シドは茶化す事無く真面目に訊いた。
「検査はしたのか?」
「いや…俺の身体は普通じゃないから、それが原因かと思っている」
「子供の事、ティファと話をした事はあるのか?」
漸くバレットが口を挟む。実はマリンやデンゼルに本当の両親のように接する彼らを見る度疑問に思っていたのだ。自分達の子供は欲しくないのかと。
結果として、ティファは望んでいないことを今知ったのだが。
「無い。強いて言えば、プロポーズが断られた時だけだ」
クラウドが言った事が本当なら、明らかな避妊を彼女が求めていなかったということにもなるので、それはティファが自分は子供が出来ない身体だと考えていたか、クラウドに隠れて避妊薬を飲んでいた可能性もあるということだが、それを今ここで議論しても仕方がないので、バレットは「そうか」の一言だけに止めた。
それを聞いて、クラウドは告白する。
「一緒に暮らして最初の頃は子供が出来ても良いと思っていたんだ。ティファとマリンと二人の間の子供と、一緒に暮らすのが楽しそうだと思っていた」
やはりクラウドは自分の子供をティファが産んでくれるのを望んでいたようだったが、過去形で言うことがバレットには気になった。
「今は違うのか?」
「…別に子供を強く希望してたというわけでもなかったけど、そのうちある事を思い出した。俺にはジェノバ細胞が埋め込まれている」
デリバリーサービスで世界中様々な場所に行くこの男にとって、時にはそこで体験した過去の思い出に心を抉られることもあっただろう。神羅屋敷での五年にも渡る人体実験、それは今だにクラウドの心に影を差し込んでいた。
「それは…無くせねえもんなんだよな」
「多分」
シドのどこか気遣いながらも事実を確認する言葉に、クラウドは諦めたように返した。そして続ける。
「セフィロスは胎児の時にジェノバ細胞を埋め込まれ、あんな最期を迎えてしまった。セフィロスを産んだルクレツィアは水晶の中で眠ったままだ。俺達に子供が出来たとしても、生まれた時からジェノバ細胞を持っていてセフィロスみたいになるかもしれない。ティファはルクレツィアのようになるかもしれない。だから…だから、子供は出来なくていい。そう考えるようになった」
また沈黙が落ちた。しかし二人は話を急かす事無くクラウドを待つ。
きっとこの男なりに色々と心を整理しながら話をしているのだろう事が分かったので、我慢強く沈黙に耐えた。
また梢を風が揺する音がする。まるで早く話せと言うかのように。
一瞬樹上を見上げたクラウドが、決意したように口を開いた。
「ティファが妊娠している。俺の子だ」
勇猛果敢にどんな場所にも突っ込む元アバランチのリーダーも、有能で通る飛空艇団の団長も、すぐには反応出来ない。話の方向から何となくであるが、子供が出来たと言われるのではと思ってはいたが、結局先程自身の子を持つ事を否定した男をまじまじと見詰めることしか出来なかった。
その表情を見て、クラウドが少し笑う。少し笑って、悲しげな表情に戻った。
「医者が言うには、流産する可能性が高いらしい」
母子の現状の説明に、まだ二人には掛ける言葉が見つからない。
そんな彼らの前で椅子の背凭れで大きく背を反らし息を吐いたクラウドが、少し吹っ切れたような、でも呆れたような口振りで言う。
「子供は出来なくていいなんて考えてたくせに、いざ本当に出来て危ないと知ったら、助かってくれと願うもんなんだな」
「自分の子供だ!当たり前ェだろうが!」
流産と言う言葉に安堵するのではなく不安がっている彼の人間的な反応に、バレットはやっと本来の彼らしい声を出せた。
「まだ父親の自覚も無いのに」
クラウドが皮肉げに漏らした言葉をシドが拾う。
「そんなモン、生まれた後にジワジワ出てくるんだよ!」
その言葉に、クラウドは頬を緩ませた。
自分は無事父親になれるのだろうか?
「ティファに付いててやれ。というか、ここで俺達と話なんかしてて良かったのかよ!?」
この場で最もふさわしいと思える発言をしたのは、血は繋がってないが彼らのれっきとした家族だった。真っ直ぐバレットの目を見てクラウドは正直に言う。
「ティファに会う前に、気持ちを落ち着かせたかったんだ」
「ちったぁ、落ち着いたのか?」
新たなタバコに火をつけながら訊くシドにクラウドは「ああ」と答え、椅子から立った。そのまま病棟に繋がる小道に足を向ける。
その背中を見送ろうとする二人に、彼は言った。
「あんた達は既に父親だから、話を聞いて欲しかったんだ」

病室はリーブの計らいで特別室が用意されていた。淡い暖色の間接照明が優しく室内を照らす。
部屋の中央に設置された医療用ベッドの上でティファは点滴に繋がれたまま横になり、顔だけ部屋に入って来たクラウドに向けた。
彼の姿を見てもホッとした様子は無く、既に涙を目に溜めている。その表情で、彼女が自分と子供の状態について既に説明を受けていたことが分かった。
「…ごめんなさい」
ベッドサイドの椅子に腰掛けたクラウドに、消え入りそうな声で謝る。
「ティファ…」
「…ごめんなさい……ごめんなさい…ごめんなさい…」
彼はベッドに投げ出された弱々しいティファの手を握った。
「謝るな。それにまだ駄目になったわけじゃない」
「…赤ちゃん…気付けなかった…生理来てないの、いつもの事だって…忙しくて、疲れてるからだって…」
「それは仕方無い事だろう?」
クラウドにとってティファと長く一緒に居ても、女性の身体については分からない事が多い。いつもと違う身体の変化に彼女が気付けなかったことを、彼は責める気にはなれなかった。
「流れたら私のせい…!」
「違う!それに俺だってティファが体調悪いの知ってて、結局現場に連れて行ってるんだ。俺にも責任はある」
「でも…!」
ティファは子供が欲しくないと思っている、クラウドはそう考えていた。しかしこの涙は、間違いなく子供を想ってのものだった。
「泣くのは、本当に流れてからにしよう。まだ助かる可能性だってあるんだ」
「…うん」
彼女も医師から、現状ではあまり期待しない方が良いと言われているのだろう。繋いだ手を毛布の上からティファの下腹部に当て、二人は命の存続を願いながらも覚悟をした。


白い景色の中に、小さな子供が居る。景色と同じ白い服を着て、まだ3~4歳位だろうか、その子はクラウドとティファに背を向け、遠くに見える淡い翠の光へ向かって走り去ろうとしていた。
「待って!!行かないで!!」
追い掛けたいのに足が一歩も動かない。だから彼女は懸命に手を伸ばす。
「お願い!!戻ってきて!!」
隣に立つ彼も足が動かず、せめてもとティファの肩に手を掛けバランスを崩し倒れそうな身体を支えていた。
あの子を知っている。まだ名前も無い、性別も分からない子だけど確かに知っている。
今手放したらもう二度と会えない事を二人共確信していたので、必死に取り戻そうとした。
「行くな!!戻ってこい!!」
堪らずクラウドも叫ぶ。
大人達の必死に追い縋る声に子供が立ち止まり振り返るが、二人からはもう顔が分からない程離れてしまっていて、ティファもクラウドも何とか近付こうともがくのに、彼らの足は石化の魔法でも掛けられた様にピクリとも動かなかった。
「お願い…戻ってきて…お願い…!」
泣きながら指先の先端まで力を籠め手を伸ばすも子供は立ち止まったままで、今だ彼女の元へ帰らず。
その時白くぼやけた背景の向こうから、細身の女性と長身の男性が歩いてきた。
懐かしい人達。クラウドもティファも、出来る事ならもう一度会いたいと願っていた親友達。
でも再会を祝う心の余裕は彼らには無く、子供に対してこれから何をするのか息を詰めて見守る。
彼女達は優しくしゃがんで子供に目線を合わせ、何かを話し始めた。会話の内容は聞こえないが、それぞれが頷いたり首を振ったりしているのが分かる。
何に対して子供は頷き、何に対して大人達は首を振るのか。その何かが分からずクラウドとティファは不安を募らせたが、今はどうする事も出来ない。
やがて話が終わり、立ち上がった大人達がクラウドとティファに向き直った。子供は二人の間で両手をそれぞれザックスとエアリスと繋いでいる。
「…その子を返してくれ。何でもするから!」
先に声を出したのはクラウドだった。ティファを支えながらも、親友たちへ必死に訴える。
目の前で誰かの命をもう亡くしたくない、それがまだこの世に生まれ出でてない存在でも。我が子なら尚更だ。
「本当は、生まれてくるはずのない子なの」
遠い距離なのに、静かに語りかけるエアリスの声がはっきり聞こえた。
「今回の事、星が自分自身を治す為傷んだ所にライフストリーム、集めなきゃいけなかったの」
子供の顔は分からないのに、エアリスが困った顔をしたのは分かる。
「でも、どこを治すか人に伝える方法が無くて」
クラウドのティファも、この星にとって特別な存在の彼女の話をじっと聞いた。今はそれしか出来なかった。
「お腹の中の赤ちゃんは、ライフストリームに一番近い存在なの。だってついこの前まで、ライフストリームそのものだったから」
子供とザックスが目を合わせ、今度はザックスが微笑んだのが分かった。
今度は彼が、クラウド達に語り掛ける。ひどく真面目な顔で。
「胎児を通じて母親にライフストリームが噴き出す場所を知らせても、母親がその情報を然るべき人間に知らせられないと、意味がないだろう?」
「だから、ティファとクラウドが選ばれたの」
エアリスの言葉にまだ二人は言葉を返さない。自分達がこの星に選ばれた事よりもっと重要な事が、彼らにはあった。
その答えをザックスとエアリスは携えここに居る。
「もう治療は終わった。余程の事が無い限り、ライフストリームがいきなり地上に噴き出すなんて事は無い。そして…」
黙ったままの二人に、やはりひどく真面目な顔でザックスが言った。
「この子は役目が終わったから、ライフストリームに還らなきゃいけない」
ライフストリームに還る、それが意味する事。
ライフストリーム災害は終わった。それは喜ばしい事だが、無慈悲な宣告にティファは激しく首を振り、クラウドは吠えた。
「言っている事は分かった!でもそんなの残酷だ!!新しい命を授けておいて、用が済んだらそれを奪うなんてあんまりだ!!」
ティファは泣きながら再び前に進もうとする。でも相変わらず足が動かせず、もがく様に腕を伸ばすだけだった。
そんな彼女に言い聞かせるように、エアリスはそっと言う。
「私達は、この子を迎えに来たの。この子は、命の流れから外れているから、戻さないといけないの」
エアリスが言っている事は、この星のルールだ。この星で生きる以上、ルールに逆らってはいけない。それはティファにも分かっていた。
でも母親の感情がそれに抗う。
「それでも私、星に逆らう事になっても産みたい…!お願いエアリス、私の命と引き換えになって良いから、その子を産ませて!」
「ティファ!!」
ティファがこの瞬間に考えた交換条件に、今度はクラウドが拒否を含んだ声を出した。子供は大切だ。でも、ティファが命を落とす事は今の彼にとって世界が終わる事と同等だった。
「あなたは、どうしたい?」
しゃがんで子供と目線を同じくし、エアリスが子供に尋ねる。返事の声は聞こえなかった。
ただクラウドとティファを振り返り、両親に向かって駆け出す。
二人は手を大きく広げた。
「ティファの命なんて、要らない。その代わりちゃんと、育ててね」
「特別に星に許された事だからな。どんな事があっても守るんだぞ」
「見守って、いるからね」

頭を優しく撫でる手の感触。
「…ティファ?」
目を覚ましたクラウドが一番最初に見たのは、淡い微笑みを浮かべ子供にする様に自分の頭を撫でてくれているティファだった。いつの間にかベッドに突っ伏して眠っていたらしい。
頭を撫でるティファの手を優しく取り自らの手を重ねると、クラウドも彼女に微笑み掛けた。
「…夢を見たの」
天井を見上げ、ティファが呟く。その目は天井より遥か上、親愛なる懐かしい人達が存在する世界を見ている様で、クラウドもつられて天井を見た。
「エアリスとザックスが居たの。それと…」
「この子だ」
視線をベッドの上、重ねた手を優しく置いているティファの下腹部に二人して移す。
「…俺達、同じ夢を見てたんだな」
広げた手の中に向かって走って来る、まだ名前も無い、性別も分からない、だけど確かに存在する愛しい我が子。
「夢、だったのかな?」
「…そうだな。でもあれは、夢じゃない」
今彼女の中には、彼等の命を懸けて守りたい者が精一杯育とうとしている。
昼間の喧騒が嘘のような静かな夜、ティファは決意を込めて言った。
「復讐の為に沢山の人の死に関わった私には、子供を産む資格なんて無いと思ってる。でも…」
一旦言葉を切り、クラウドの瞳を見詰める。
「…あなたの子供を産みたい。産ませて下さい…!」
「当たり前だ。いや、俺の子供を産んでくれ、頼む」
彼女の懇願に、彼も懇願で返した。ティファの顔がくしゃりと歪む。震える唇をゆっくり指で撫で、クラウドは静かに言った。
「過去が消える事は無い。これから先、どんなに楽しい事や嬉しい事があっても、俺達は心の底から笑う事は出来ない。それは与えられた罰の一つだ」
目を閉じ、彼女は頷く。きっと死ぬまでこの罪悪感は消えない、いや、消すつもりは無い。それは多くの人々の死に関わった者の責任だ。
「いつか裁かれる日が来るかもしれない。復讐されるかもしれない。その時は二人でそれを受け入れよう」
一緒に居て必ずしも幸せな未来が訪れるとは限らない。想像を絶する苦しみを味わう事になるかも知れない。それでも、例え地獄に堕ちる時でさえ、二人が共にあることがクラウドの望み。ティファが心の底では望んでいても、彼の幸せを考え、口に出せなかった願いである。
ただ、ティファは不安気な瞳をクラウドに向ける。下腹部で重ねた手に少し力を入れながら。
「分かってる。子供だけはどんな事をしても守ろう。それに俺達に何かあった時は、必ず仲間が助けてくれる。今までだってそうだったろう?」
ティファは再び目を閉じた。仲間達の顔を一人一人思い浮かべる。その中には、産まれてくる子供の兄と姉になってくれるであろうデンゼルとマリン、ライフストリームに還った彼女らの親友達も居た。きっとみんながこの子を見守ってくれる。何かあったら助けてくれる。
「大丈夫だよ、ティファ」
ティファを安心させる、魔法の言葉。安堵の笑みを、ほんの少し彼女は浮かべた。
「俺がずっと側に居る。だから子供と一緒に生きていこう」
泣きながら何度も何度も頷くティファの頭を、クラウドは何度も何度も優しく撫でた。
今彼女の胎内で懸命に小さな鼓動を刻む存在をも包み込めるよう、祈りにも似た気持ちでティファの頭を撫で続けた。

細く透かした窓の隙間から柔らかい風が病室に流れ込んでいる。当分自宅でも安静の指示は出ているが、数日後にティファは退院出来るようになった。
子供達が変わりばんこにベッドサイドにやってきて、ティファのお腹に向かって挨拶をする。デンゼルは兄として、マリンは姉として。そして「妹はもう居るから生まれてくるのは弟が良い」と言うデンゼルと、「一緒にいっぱい遊べるから女の子が良い」と言うマリンが激しく議論を戦わせ出したが、苦笑しながらティファが「元気に生まれてさえくれたら男でも女でもどっちでも良い」と仲裁し、それを見ていたバレットが「何だか俺は孫が生まれる感じがして落ち着かねえよ」と言って皆を笑わせた。その後やっと子供達は、自分達の横でティファに話し掛ける順番を大人しく待っていたクラウドに場所を開けるのだった。
ベッドサイドに立ちティファを見下ろすクラウドは少し緊張した面持ちをしている。いつもなら体調を聞き、自宅での出来事などを報告するのに、彼はまだ口を開かなかった。
怪訝そうに見つめていたティファは、急に視線を下げる事になる。
クラウドがベッドサイドで片膝をつき、小さな石が光る指輪が収まった小箱を彼女に見えるように開いて言ったのだ。
「ティファ、結婚してくれ」
彼が片膝をつく訳も、指輪の意味も分かっていた。分かっていながら、頭が発せられた単語をきちんと理解するまで時間を要した。
一度断ったのに何故?
ティファの頭に浮かんだ疑問を彼女の表情からクラウドは正確に読み取り、その疑問に彼はデンゼルとマリンにもはっきり聞こえるように答えた。
「今だって家族だけど、ティファと正式な夫婦になりたい。ティファを俺の妻だと皆に紹介したい。そして正式な夫婦として、生まれて来る子供を迎えたい」
「…正式な夫婦として、生まれてくる子供を迎えたい…」
彼の言ったことをそのままなぞり、ティファは沈黙した。
クラウドも彼女が返事を返すのを待った。
バレットもデンゼルもマリンも、固唾を飲んで二人の様子を見ていた。
「…はい」
クラウドに向けて言った返事の筈なのに、先に歓声を上げたのは子供達。「おめでとう!おめでとう!」と何度も繰り返し、二人で両手を繋いでぴょんぴょん飛び跳ねながら全身で嬉しさを表現した。バレットはクラウドの肩に手を置き、「しっかりやれよ」とだけ言う。そしてはしゃぎ過ぎている子供達を「ここは病室だ」とたしなめた。
「家族が居たら私が断らないと思って、プロポーズしたの?」
バレットが背を向けている隙に、枕元でクラウドにだけ聞こえるようにティファは言った。
「俺にとってはやっぱり賭けだったよ。また断られるかもしれないって思ってた」
何故かニブルヘイムの少年時代を思い出させるクラウドの顔。それは給水塔にティファを呼び出した時と同じ表情をしていた。
きっと来ないと思っていた好きだった女の子が、来てくれたことを知った時の胸を撫で下ろしたような顔。
懐かしくて嬉しくて、でもどこか切なくて瞳が潤む彼女の額に、優しく触れる彼の唇。
そんな二人にはお構いなしに、ベッドサイドに駆け付けた子供達からは、結婚式はいつなのか、どこで結婚式をあげるのか、ティファはどんなドレスを着るのかと矢継ぎ早に質問が飛んできた。子供達にとっては、結婚イコール結婚式らしい。
ティファと顔を見合わせたクラウドが「結婚式は子供が生まれてから考える」と答え、デンゼルが「じゃあ、子連れ結婚だな!」と微妙に正解と外れた事を大威張りで言ったので、大人達はとうとう噴き出してしまった。大人につられてマリンも笑った。自分が笑われていると最初むくれたデンゼルも、結局一緒に笑って、病室は祝福の喜びに包まれた。

前向きに生きている。でも忘れてはいけない過去がある。
裁かれることを覚悟して過ごす日々の中で、敢えて自分の幸せをティファは考えないようにしていた。
でも、生まれてくる命が与えてくれる幸せに抗うことは、到底出来そうもない。それはクラウドも一緒で。
彼女に宿る小さな小さな存在、それは二人にとって未来に向かう一筋の光明となった。

FIN









8888HITSS、頂いたリクエストは大雑把に言うと『ティファのおめでた』でした。
実を言いますと、このお話の原型妄想は私がクラティSSを書き始めるずっと前、まだ素敵サイト様を巡る一読者だった頃から頭にありました。多分公式小説で、ティファが笑っている自分をとても罪深い存在に思ったり、いつか罰せられる日が来るかもしれないと考えているところが書かれてあったから、そんな妄想が沸いたのかな?と。
しかし話が話なだけに、自分自身がSSを書くようになってからも形を取ることはせず、これを書くとしたら私がクラティ二次から引退する時だな…と考えておりました。
『おめでた』のリクエストを頂いた時、これとは全く別の甘い話を作ろうかと考えたのですが、私の性分を考えると「いつかそのうち書く!」というものは結局書かないで終わるだろうし、一つ妊娠ものを書いたら別バージョンはもう書かないと予想が出来たので、今回思い切って文章化…!
変な言い方ですが思い入れのある妄想だったのでやたらと気合が入っていたのと、丁度仕事がアホみたいに忙しくなったので時間が掛かりましたが、やっぱり文章にして良かったです!
ちなみに文中に出てきたお腹の中の子は、私の妄想の中ではいつかまた来るという約束をして流れてしまう話だったので、今回リクを頂いたお陰でまさに命が助かりました。
でもリク主様には大変お待たせした上、当初頂いていたリク内容との共通点が結局ティファが妊娠した事だけという仕上がりになってしまい、申し訳なくて頭を地面にめり込ませての土下座ですorz
本当に本当に、スミマセンでした…(´;ω;`)!!!
こんな管理人ですが、これからも宜しくお付き合い頂けると幸いです。


スポンサーサイト
もくじ  3kaku_s_L.png about
もくじ  3kaku_s_L.png AC
もくじ  3kaku_s_L.png 本編
もくじ  3kaku_s_L.png SSS
もくじ  3kaku_s_L.png 宝物
もくじ  3kaku_s_L.png 日記
もくじ  3kaku_s_L.png お返事
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 学園パラレル
もくじ  3kaku_s_L.png 本編前
もくじ  3kaku_s_L.png 本編中
もくじ  3kaku_s_L.png AC前
  • 【光明(中編)】へ
  • 【今後の予定と拍手お礼】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【光明(中編)】へ
  • 【今後の予定と拍手お礼】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。